メンタルヘルス・コラム

TOP >  コラム

性をどう生きるか②~ノンセクシャルを生きる~

2016年08月15日

ある日、私のところに「自分は女性にモテない。これでは人生に暗雲が漂うばかりで、生きがいもない」と訴えるクライエントが来談された。
  
「モテる」とは、よく言われているように、人(異性・同性)から興味関心を持たれ、性的存在として魅力に富んでいることの意である。また性的存在とは、「会いたい」「一緒にいたい」といった愛慕の情や、「触れたい」など身体接触の欲求や期待を持たれる対象を指している。

 

このクライエントは、自分はそういった存在ではなかった、とこれまでを思い返していた。周りから求められてこなかったこと、必要とされてこなかったことが、性を生きる自信を失わせていたことに気づいていった。どうせ自分はモテないという思い込みが、異性に対して働きかける気力を低下させていたようである。

 

「あなたの人生にはどのような性が憑りついているのですか」とさらに投げかけてみると、クライエントは性に関する不快な体験を山ほどあげつらった。性に対して心や身体で反応する能力や、性的な喜びを体験する能力をすっかり抑圧・抑制しあきらめていたのである。言うならば性のうつ病にかかっていたとでもいったところだろうか。

 
逆説に真理ありで「性を無視して生きてみてはどうでしょう」と、クライエントに奨めたところ、溜飲が下がったようで喜んで帰られた。
 
                               東京メンタルヘルス 所長 武藤清栄

描画療法について

2016年07月28日

描画療法の1つに6場面物語構成法というものがあります。
6画面の物語構成法(The Six Parts Story Making(以下, 6PSM))は、イスラエルの心理学者Lahad(1992)によって開発された描画療法で、独自のストレス対処法を見つけ出すことができると考えられています。
6PSMは、画用紙を6分割し、セラピストの教示に従って絵を描きます。各画面には主人公・課題・援助者や援助ツール・困った状況・解決方法・結末を表現させ1つの物語を作り出すというものです。

 

方法
A4の画用紙を6分割に折り目を付けて「A4の画用紙の左上から時計回りに1コマずつ指示に従って絵を描いて、6つの場面を使って1つのお話を作ってもらいましょう」と指示します。1コマずつ教示を行いそれぞれに描画をしてもらいます。
その後、ストーリーを作ってもらい、最後に物語について質問を行います。

6場面
 

 

6PSMは現実の世界の自己を物語に投影させることにより、クライエントの抱える問題を浮き彫りにします。セラピストとその問題を共有してストレス対処法を見つけることを可能にするとLahad(1992)は述べています。
また、自分の抱える問題だけではなく、自分の理想や、現実の状況、自分の特性や行動パターン、援助者の価値など、今まで気づかなかった様々なことが見えてきます。
そして、6PSMは画用紙を6分割することによってクライエントが絵を描くときの負担が少なくなることと、それぞれの場面に順番に描画課題が提示されることにより、クライエントが描画表現をしやすくなるという特徴を持っています。

 

 

あるストーリーを紹介します。

 

 

テーマ:うたをうたうひと
初音ミクという歌を歌うバーチャルの女の子がいました。ミクは色々な人が曲を作りそれを歌い、色々な人が聴く、そんな日々を過ごしていました。ある日、ウィルスによる深刻なエラーで歌うことが出来なくなってしまいました。歌を作ってるうちの1人、Aさんは、ミクを歌わせてあげたいという気持ちで、ミクのためにセキュリティソフトを作りエラーを治しました。そして今でもミクは色々な人に歌を届け続けているのでした。

6場面

 

 

 

こころの奥やすみっこに隠れていたり、当たり前すぎて言葉にできなかったり、
あなたの表現したいもの、表現したかったものが見れるかもしれません。

 

東京メンタルヘルス 臨床心理士 大串保美

性をどう生きるか①

2016年07月8日

「あなたの人生は、性にどんな影響を受けたのでしょうか」
これが私のセクシュアリティの見方である。
したがってセクシュアリティのカウンセリングも、このようなスタンスで行っている。

 

ここで言う性とは、生物学的な性はもちろん、社会学的な性、つまり「ジェンダー」を含んでいる。

また、自分の性だけでなく他人の性にも影響を受けている。性が人生に影響するというのは、斯様に様々である。

 

性器レベルのような身体的な特徴もあれば、「モテるモテない」といった人気度を表す心理社会学的なレベルもある。性の差別が根底にあるセクハラの関係などもある。

 

最近は性的違和感を覚える「トランスジェンダー」の人たちも、性差別からの解放を求めている。
また近頃では、LGBTという言葉も定着しつつある。
LGBTとはL(レズビアン)G(ゲイ)B(バイセクシュアル)T(トランスジェンダー)の頭文字をとったもので性的少数派を意味する。

 

いずれにしても人は性をどのように生きるか、ということが求められているが、その手枷足枷になるのは、性をどのように教えられて、また体験してきたか、ということに潜在的ヒントがある。
つまり、それが人生の影響ということである。

 

東京メンタルヘルス  所長  武藤清栄

梅雨とメンタルヘルス

2016年06月15日

梅雨とは6月(陰暦5月)頃に降りつづく長雨のことである。
関東地方も梅雨に入り、五月雨が降ったり、どんよりと曇り空がつづき湿気が多い。

 

五月雨の「さ」は五月(さつき)、「みだれ」は水垂(みだれ)の意味で、
雨がしずくになって落ちる様や途切れがちに繰り返す様子を表現している。

 

梅雨の語源は、梅の実が熟する頃の雨という説があるが、梅雨は「黴雨」とも書き、
「カビの雨」を意味する。この時期はカビが発生し物が悪くなることに由来しているそうだ。

 

一般的には梅雨時になると気分がすぐれなくなる人が多くなり、抑うつ的になりやすい傾向がある。
梅雨空は当社サービスの「コンケア」にも反映し、「くもり」や「雨」のマークを押す人が多い。

 

しかし一方で、梅雨空を大歓迎する人がいる。太陽アレルギーを持つ人である。
太陽の紫外線に当たると「蕁麻疹」が出てしまい、熱とかゆみを訴える。アレルギーによる血管壁の過敏な反応である。
太陽アレルギーの人たちにとっては恵みの雨であろう。

 

まさに「蓼食う虫も好き好き」ということだろうか。

 

東京メンタルヘルス 所長  武藤清栄

「季節性うつ病」には光療法が効果的

2016年05月24日

「季節性感情障害」という病気があります。所謂「季節性のうつ病」のことです。
これは1984年にアメリカの精神科医ノーゼン・E.ローゼンタール(1950~)によって提唱されたうつ病の一種です。
当時、うつ病には引っ越しによる疲弊からなるうつ「引っ越しうつ病」、ストレスを伴う大きなイベントや出来事が終わった後にくる「荷下ろしうつ病」、表情は普段と変わりなかったり、笑顔を浮かべたりするが身体に症状がでるうつ「仮面うつ病」、不安や葛藤が強く、自殺念慮や企図が激しいうつ「激越性うつ病」など様々なものがあります。それはうつ病に影響した出来事や病態によって呼び方が違うのです。
しかし、1951年アメリカ精神医学会の診断基準(DCM)が出てからは、先に記した呼び方は少なくなりました。
症状やその継続性、体質や気質、そして背景となった環境などを中心に新たな診断分類が用いられるようになったからです。

 

 

ところで、季節性うつ病とはどんな病気なのでしょうか。簡単に言えば、気圧や気温、日照時間、雨や風など気象に過敏なうつ病のことです。気象に過敏になるのは何もうつ病だけではありません。花粉症に始まり、気管支喘息、関節リウマチ、適応障害、胃腸障害、紫外線障害などは有名です。

 

一般に季節性のうつ病は、湿度の高い雨天や気温が低下し、寒くなったり急に暑くなったりするような日内変動の環境下で調子を崩します。
秋冬の時期にうつ状態になり、春夏には寛解(完治までいかないが症状が治まった状態)したり、逆に躁状態になる人も少なくありません。北国ほど発症率が高いと言われています。

 

私の知っている例では、6月と12月には必ずうつ状態になる社長さんがいました。この社長さんの場合は季節というよりも、社員に対してボーナスを支払う時期と関係していました。

 

季節性うつの治療は今までは薬物療法をメインにはしますが、2500~3000ルクス(ルクス:明るさの単位。1時間当たりの日光量は約1000ルクス)の光照射療法も奏功します。
このように考えると自然にはかなわない病気がたくさんありますが、人間は知恵を用いてそれを克服することもできるのです。

 

 

東京メンタルヘルス  所長  武藤清栄

5月病(6月病)を乗り越える

2016年05月9日

5月病(6月病ともいう)というのは、古い言葉ではあるが、毎年のように語られてきた時事用語である。
これは4月に入った新入社員や新入生が5月の連休明け以降に神経症や不安症、軽い抑うつ症状を発症することである。

 

新入社員や新入生、中には異動や転勤(転校)してきた人たちは、人間関係や新たな仕事に馴染めず、大なり小なり「リアリティショック(イメージと現実とのギャップ)」を持ち、適応困難になる人がいる。

 

最近では、友達が作れない自分を、周囲に気づかれまいとして引きこもってしまう学生や仕事の進め方について先輩や上司に聞けないため、長時間孤軍奮闘して、疲れ果ててしまう社員など、そういう自分に自己嫌悪を抱き、うつ状態になる人も散見される。

 

それでも4月はなんとか乗り切って、5月の連休に浸かりながらほっとする。

 

しかし、連休が明けても身体が言うこと聞かない。

 

過度な緊張感に襲われたり、気が張り詰めたりしてしまう。中には抑うつ的になり、意欲が湧かなかったり塞ぎ込んだりする場合もある。

 

 

こういう時は「大丈夫、なんとかなる」と自分に言い聞かせずに心療内科や神経科を受信したり、腕のいいカウンセラーにヘルプしてもらうことをお勧めする。
待合室には同じ悩みを抱えた仲間たちがたくさんいて励まされるはずである。

 

 

東京メンタルヘルス 所長  武藤 清栄

正常性バイアスのリスク~ゴールデンウィークに変えて~

2016年04月18日

担当からゴールデンウィークについて、何か書け、という話しがあった。「あいよ」と安請け合いしたものの、 熊本を中心とする九州地方の地震の最中に、ゴールデンウィークをテーマにすることには気がひける。

 

通常なら、ゴールデンウィークには由布院も黒川温泉も別府も阿蘇連山も多くの観光客で賑わっているはず。
おそらく地元民もそれを見込んでいたであろう。

ゴールデンウィークはキャンセルの電話に対応するどころか、被災者を受け入れる施設として準備をしなければならないのではないか。

おそらく県も国もそのような対策を取るであろう。

 

 

今回の地震は14日の震度7の初震(前震)で、数多くの被災者を出したが、2回目の地震ではさらに多くの犠牲者を出してしまった。

後にこれが本震であった事が気象庁から知らされる。

住民にとっては、初震(前震)が大きかっただけに「これで終わった」「もう大丈夫」と思ったのである。

 

 

この
「もう大丈夫だ・・・」
「あっ電気がついた」
「家に帰ろう」

といった安堵感に伴う過小評価する気持ちが働いたのではないか。

 

 

これを社会心理学では「正常化バイアス(normalcy bias)」と言う。
今回も、ほっとして家に帰り、寝ていた隙に本震に見舞われた人たちが多かった。

 

 

でも、我々は危機的状況の中で自分を防衛し、他人を安心させるために、無意識に「大丈夫だよ」「もう心配しなくていい」と言いきかせてしまうことがあるものだ。

東京メンタルヘルス 代表 武藤清榮

描画療法について

2016年04月12日

描画療法とは、クライエントに絵を描かせることによって心の状態を図ったり、セラピーを試みる技法です。

20世紀の初めころにF.L.グッドイナフが開発した描画法による知能検査(DAM)が、臨床の場において取り入れられ、その後は知能検査に止まらず人格検査としても様々な描画法が研究されて用いられています。現在の代表的な描画法としては、バウム(樹木画)テスト(Koch)、HTP(家・木・人物画)法(Buck)、風景構成法(中井久夫)などがあります。
描画には知能以外にも人格的要素や精神面の状態像が見ることが出来ます。描いた人の感情や思い描いていること、また、普段意識していないことなどが描画として表現されるという特徴を持っています。
実際のカウンセリングでは、描画法を用いることで、クライエントが日常的に意識されていない自分の感情や思いに気づくことができるだけではなく、カウンセラーがクライエントの問題や状態をより深く理解できることになります。クライエントとカウンセラーは描画を通して、問題を共有しクライエントのパーソナリティを明確にして面接を行っていきます。
また、描画によってクライエントは自分自身の気持を表現することで、今まで抑えられていた不快感や不安、恐怖などが浄化され、気持ちが楽になるということも描画法の良い点です。
あるクライエントは、仕事上に悩みを抱えており、自分自身のパーソナリティに問題があるのではないかと相談に来ました。数回面接を受けているうちに、家族のこと、将来のことなども問題として挙げられてきたので、課題描画法を取り入れて見ました。課題に添って絵を描き、描画後にカウンセラーから質問に答えていくプロセスの中で、次第にクライエントは自分自身を振り返り整理していきます。そして、自分の一番の問題は転職するかどうか迷っていること、自分がこれから何をやりたいかということが次第に見えてきました。クライエントは描画によって自分を表現して浄化され、そしてモヤモヤしていたものがはっきしてきたことで、今まで気づかなかったことがわかり気持ちも楽になったようです。
描画法には課題を与えられて描いていく課題描画法と自由に描いていく自由画法があります。小さい子供は自由に描いて貰ったり、また、大人の方も自由画であったり、課題があった方が描きやすかったり、クライエントの状態によって使い分けます。そして、描画法は絵を描くだけではなく、絵を媒体としてクライエントとカウンセラーの関係性を築き、信頼関係を高めることもできます。また、話すことが苦手な方や、 自分の考えていることをうまく表現することが出来ない場合などにも有効です。

 

東京メンタルヘルス 臨床心理士 大串保美http://mentalhealth.jp/counselor_page/other_list#anchor10

春、それは変化する象徴

2016年04月5日

桜の季節がやってきた。

春のイメージは、寒さがゆるみ、華やかな雰囲気がある。

 

しかし、春は花粉も連れてくる。花粉症は二人に一人が罹患する国民病である。

小生もその一人である。

 

春の始まりは、風が吹き、冬に潜伏している色々な病原微生物を舞い上げているような情景がある。

「春はそんなものだろう」と抑圧をして、遣り過ごしてはいるが、そうなると、春の様相に特別な感情も希望も持てなくなる。年々にその兆しが強くなっているように思える。加齢のせいで、体力が減退していることも理由の一つだが、春は、変化を感じさせる。

 

そんな季節の変わり目に「安寧」を求めているだろう。「地」が不安定であれば、ちょっとした刺激もストレッサーになる。それは来所されたクライエントから、度々教わったことでもある。

 

とにかく、春には穏やかな「ひととき」がほしいのだ。

 

 

東京メンタルヘルス 代表 武藤清栄

30年間講師活動を続けてきて最近気づいたこと

2016年04月4日

「講師は滑舌も良く、内容も具体的で分かりやすい。ただ、現場で使えるかどうかはわからない」こんな受講生のアンケートを目にすることです。

せっかく貴重な時間を使って行われた研修が、現場で生かされていない状況が窺えます。

例えば、職場でのコミュニケーションの希薄から人事研修係は「自己表現(アサーション)」の研修を導入しました。受講生のアンケートは、「よく理解できた」「まあ理解できた」の結果を合わせると、高い評価でしたが、「職場で役に立つ」、「現場で使える」、といった回答は、40%を切ってしまうという結果が出ました。そこで、ある事例を見ると、部下Aさんはミスをして上司Bさんに頭ごなしに貶められ気力を失っている場合、部下Aさんは、自己表現の研修に出ても、その後職場では一向に状況は変わっていないことになります。部下Aさんは不満な気持を上司Bさんに伝え返したくても、途中であきらめてしまうそうです。そこには「どうせ言っても無駄だ」という考えが先に立ってしまい、また一方で、上司は「いちいち聞いていられない」、「悩んでいる暇などない」と言います。

こういった現実を踏まえると、講師にはもう一歩踏み込んだ、現場に見合った研修が求められます。そのためには、実際の場面を想定して上司と部下のやりとりの仕方に充分時間をかけ、相互交流を実現させることです。相互交流によって信頼関係を醸成し誤解や防衛を解いていくような人間関係を作り、社員一人一人の士気を高めていくような研修を目指しています。

 

東京メンタルヘルス 代表 武藤清栄

検索する

Copyright © 2017 Tokyo Mentalhealth All rights reserved.

ページトップへ