メンタルヘルス・コラム

新うつとは? その4

2015.11.02

新うつの第4回目は、境界性性格に基づくうつを取り上げたい。境界性性格は対人関係や自己イメージ、それに感情などがきわめて不安定であることに特徴がある。その根底には、常に自分は「見捨てられてしまうのではないか」といった不安や恐怖がある。そしてその状況に対し心理的防衛が働き、極めてナーバスな反応をしてしまうのである。

例えば、ちょっとでも相手が自分を避けるような発言や拒絶するような態度を取ると、その意味をしつこく聞こうとしたり、納得がいかないと激怒したりする。それは見捨てられないためのなりふり構わない努力の姿でもある。

現実のやりとりで実際にうまくいかないことが起こると、ひどく傷つき自傷行為や自殺行動も辞さない。逆に自分に対して無条件に愛情をかけてくれる人に対しては、限りなく理想化するが、何かのきっかけでそれが成就されないときは、激しいこき下ろしが待っている。従って対人関係は不安定で激しいものとなり、相手も気を遣ってしまう。また、自分に対するイメージも両極端だったり不安定だったりする。一貫した感情を保つことができないため、周囲からすると、ついつい人が変わったように見える。その結果、物事に対する価値観、目標、仕事などについても、突然考え方や感じ方を変化させるため、周りがついていけないことが多い。

日常の生活では、賭け事、浪費、無茶食い、薬物乱用、衝動的な性行為、無謀運転、前述した自傷行為や自殺企図など、自分を追い詰めたり傷つけたりするような行動を示すことが多い。そして内面ではそういう自分を恥ずかしく思ったり、罪悪感を持ったりする。そうなると自分を嫌悪し、自責の念を持ち、うつ状態になる。また実際にそういう自分を周囲が見捨てたり、拒絶したりする場合もうつ状態を示す。そしてその状態からしばらく抜け出られないときがある。

いずれにしても境界性性格によるうつ状態は、過去に見捨てられ体験があり、それを抑圧した結果、新たな見捨てられ情況に対して激しく反応するという心理的防衛機制がある。

Oさんが抑圧したもの
Oさん(男性、29歳独身)は、普段大人しく、一見いい人であると言われている。彼には同じ年の彼女もいるが、時々怒りを爆発させてしまうという。それは特に彼女が待ち合わせ時間に遅れた場合である。4~5分遅刻しただけでもバカにされたと思い、激しく彼女を攻撃してしまう。その後には決まって別れ話が待っているというが、数日経つと、縒りが戻り、付き合ってしまうという。

喧嘩しては求め合い、求めては喧嘩してしまうので、彼女もいい加減に愛想を尽かしているという。Oさんの話をじっくり聞いてみると、約束を破られたり、決められた時間に来ない時は、ついつい見捨てられたと思い、自分が必要とされていないと思ったり、認められていないという考えが起こってしまうという。そうなると堪えきれなくなり、それを相手にぶつけてしまう。

「過去にもそういった体験はあったのですか?」と尋ねると、「小さい頃自分は兄弟の中で一番爪弾きにあっていました。他の2人に比べると、勉強もできなかったし、運動も苦手で親や周りからの評価は低かったです。そういう時は、『もう我慢ができない。いつかこいつらを見返してやる!』と自分に言い聞かせてきましたね。しかしその場では、それもできずに何事もなかったかのように振る舞ってきました」Oさんはその隠した部分を「心の闇」と表現した。「その時に自分の気持ちや感情を表現したり、本当はどうしてほしかったのかを伝えられたらよかったのですがいつも誤魔化し、逆にその怒りを原動力に生きてきました」「闇の部分にOさんの生きる原動力があったのですね」Oさんは黙って頷いた。

「そういう自分の生き方が、最近とても嫌になって、彼女とも付き合う資格がないと思うんです。でもそうなると急に寂しくなり、落ち込んでしまいます。こういう自分はいない方がいいんじゃないか、迷惑をかけているのではないかと思い始めると、雪だるま式にどんどんマイナス思考に支配されてしまうのです」

そこで小生は、物事の見方、考え方を修正できるような認知行動療法を実施した。すると以前のような落ち込みやうつ状態からは半ば解放されるようになった。

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