メンタルヘルス・コラム

日常の“モラハラ”-ハラスメントその2-

2015.11.02

パワハラやセクハラが何故起きるのかという視点はもちろん大切であるが、それらがどのようにして起きるのかという視点はもっと現実的である。

パワハラのタイプには、怒鳴ったり机を叩いたりする「攻撃型」、人格や能力を否定する「否定型」、自分のやり方や不正を強要する「強要型」、仕事や情報を与えない「妨害型」、仕事に対して極端に意欲が乏しく消極的な「事なかれ主義型」、責任を回避したり部下のせいにする「無責任型」、細かく仕事を指示しすぎる「過干渉型」等がある。

これらが何故起きるかといえば、その相手が無能に見えたり気が利かなかったり、つまりこちらの期待に応えてくれないからである。また、場合によっては自分よりも能力があったり、過去にひどい目に遭っているために妬みや恨みを持っていて、それがパワハラとして出る場合もあり、それはほとんど無意識に起きる。

職場では前者のケースが圧倒的に多く、いわゆるこれが「ローパフォーマー」に対するパワハラである。受ける側は嫌がらせと取ることが多いため、仕事や人間関係に不安を感じたり、人格を侵害されたと思い、労働意欲を失ってしまう。

また、自分に非があると思い、自分の無能さや性格について自責の念を持ち、うつ状態に陥ることもあるが、現実にはその思いを言葉にして語ることはない。

コミュニケーション障害としてパワハラを捉えるなら「ローパフォーマー」の部下をどう育成するのか、内向的で無口な部下とどう向き合い、コミュニケーションを取るかが課題になる。これが冒頭で述べた「どのように」という現実的視点である。ここで最も役立つのは双方の言語・非言語のやり取りを記録し、分析してみることである。そして、そこから双方が学べると良い。

一方、セクハラは何故起きるかと言えば、基本的には性的欲求を満たすためである。相手に対して一方的だったり無理矢理だったりする場合は、相手の同意を裏打ちしていないことになる。これはセクハラを定義する時の要件である。「二人はよければ吉野川」つまり、双方が同意していればセクハラは成立しない。

この時、同意を得るプロセスに於いて、同意が得られない場合に権力を用いて相手に仕返しをしたり、困らせたりして、関係を悪化させ、居場所を失わせてしまうのが「対価型」セクハラである。

セクハラには大きく分けて、前述した「対価型」と職場環境やコミュニケーションを悪化させる「環境型」があるが、後者は前者に比べると陰湿性は低く、例えば下ネタの話ならまだ明るい助兵衛といった印象がある。しかし、気にしやすい性格傾向や反応しやすい状況にある場合は、ちょっとした言葉や身体接触、メールやポスターなどを不快に感じ、「環境型」セクハラになってしまう。

ある男性が職場の懇親会の席で同僚の女性に「いい形のおっぱいしてるねぇ!」と褒めたそうであるが、言われた本人は「えっ、ほんと!エッチ」と言いつつも、嬉しそうな表情を見せたという。ところが、その隣に座っていた女性は「気分悪い!それ、セクハラ!」とまじめに怒って席を立ったという。

このように人によって感じ方やメッセージの受け取り方は様々である。こういう場合はその場がどのような雰囲気だったのか、お互いがどんなパーソナリティで、そのメッセージをどのように受け取ったのか、その場でのプロセスがどんな展開をみせたのかという現実的視点を理解することが大切である。

後の女性のようにその場ですぐに反応し、席を立てる人は自らの行動化によってストレスを発散させたともいえるが、ひょっとしたら、自らの言動を後悔したかもしれないし、その言動で周囲の人たちに何らかの影響を与えたかもしれない。しかし、ほとんどの人たちは不快感などのストレスを抑圧・抑制してしまい、うっ積させ、そして、職場環境やその状況にフィードバックされる。

ハラスメント対策は個人の認知レベルから組織や社会のモラル、規範レベルまで様々考えなければならないが、具体的には「ハラスメント教育」や「組織的対応の仕組みづくり」などは必須である。それに加え、前述したような事例があった場合は当事者や関係者が集まって話し合ったり、議論できる機会があると良い。

話し合える集団関係や組織づくりはその集団の構成員に何かを気づかせ、成長させるからである。それは他人や自分の長所や欠点に留まらない。職場ではお互いの期待や欲求、渇望、そしてそれらを手に入れる手段について曝け出すぐらいの雰囲気があると良いだろう。

では、秘密にしておきたいことはどうするのか?人には隠しておきたいこと、まだ評価されたくないことなどもある。それは自分で認め、洞察するしかない。

人は心の中で思ったことを全て言わなくても良い。また言いにくいことは沈黙で表現してもいいと私は考える。

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